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「自然の中で生きている」ということを、改めて知る。

自然(四季や天候・気圧の変動など)は生物に大きな影響を及ぼします。

具体的に「どのような影響を受けているのか」をご紹介します。

「雨の日は気分が乗らない」「寒い日(暑い日)は外に出たくない」など、人間の生活は日々天気(天候)に左右されますが、天気は体調の良し悪しにも関係があります。

人は恒温動物(外温に左右されることなく自ら一定の体温を保つ動物)です。体内酵素の働きを維持するために体温を一定に保たなければなりません。天候などが激しく変動すると、おもに自律神経の作用によって体温を維持しようとします。寒いときは末梢血管を収縮させ、温かい血液を身体の中心に集めようとします。熱いときは汗をかき、気化熱を利用して身体から熱を放出することで体温を下げようとします。

また気圧の変動にも身体は恒常性を保とうとします。たとえば気圧が下がると耳の奥にある内耳の圧力センサーが作動し、交感神経を刺激し(体内の防御反応が働き)、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が分泌され、血管が収縮して痛覚受容器の働きが活発になります。つまり気圧が下がると痛覚が敏感になり、体感する痛みが強まる傾向があります。腰痛や肩こり、頭痛や関節痛などが、低気圧が通過する梅雨の時期にひどくなりやすいのはこのためです。

低気圧が身体に及ぼす影響

低気圧がくると頭痛や身体のだるさを感じる方がいます。これは低気圧によって頭蓋骨内や血管内に圧力の変化が起きているからです。低気圧によって起こる頭痛は三叉神経(頭部や顔面の感覚や咀嚼運動を支配する脳の神経)を刺激することが原因となります。山の上など気圧が低い場所へ行ったとき、ペットボトルやお菓子の袋が膨れ上がる現象が体内で起きているのです。また天気や気圧の変動が硬膜の緊張を生じさせ、髄液循環の不全から様々な症状の原因となる場合もあります。

​春

春は冬の寒さによる身体全体(筋肉・各臓器など)の緊張が緩んでくる季節です。しかし暖かくなるといっても身体はまだ準備段階のため、急に動いたりせず、春先はできるだけゆっくり動き出すようにしましょう。また寒暖の差もあるため、体温を維持する能力が低くなります。その結果、体内の血中酸素濃度が低下し、体調不良を起こしやすくなります。春になると眠気や頭痛に襲われるのも、多くの場合酸欠が原因となります。その他、首や肩の凝り、ぎっくり腰や寝違えなどを起こしやすい季節でもあります。

​夏

夏は熱中症や水中毒症状、急性腎不全などに気をつけましょう。「(熱中症対策に)水を●ℓ(大量に)飲むべき」という話を聞きますが、個々人によって体質が異なるため、水の飲み過ぎが腎機能に負担をかけてしまい、水中毒症状を起こす場合もあります。熱中症対策としては涼しい場所に移動することをおすすめします。また外気温が高くなると人体では気化熱現象(液体が気体に変化する際、熱を奪っていく現象)が起こります。森にいると涼しさを感じられる(植物の葉にある水分が蒸気化するため)ように、人も汗腺から汗を出し、気化熱によって自身の身体を冷やそうとします。この機能によって想像以上に腹部が冷えたり、体調不良を起こしやすくなります。暑い季節ではありますが、できるだけ温かいものを飲むようにして夏バテを防ぎましょう。また夏はどんどん汗をかくべきですが、現在は熱帯夜が続くことも多いため、上手にエアコンを利用することが重要です。

​秋

秋は昼夜の寒暖の差が激しくなり、体温調節のために身体に負担がかかります。その結果、胃の感知能力が鈍くなり、食べ過ぎ(胃拡張)などにつながってしまいます。食欲の秋とは言っても、食べ過ぎに気をつけましょう。暴飲暴食は肝臓に大きな負担をかけるため、肝臓自体にコレステロールが溜まりやすくなります。そのため日々の食生活にも注意が必要です。

​冬

冬は春に向けて身体が休息期に入ります。湿度が低く空気が乾燥しているため鼻や口の水分量が減りやすく、肺に負担をかけやすくなります。皮膚呼吸の効率も悪くなるため皮膚も乾燥しやすくなります。また冷え込むことで身体の毛穴が閉じやすく(汗が出づらく)なり、体内の水分を尿で排泄しようとするため泌尿器系にも負担がかかりやすくなります。

この時期は皮膚や肺を潤すために水分を十分に補給することが大切です。栄養を効率よく吸収し、臓器を冷やさないためにも温かい食物や飲み物が最適と言えます。

体内の血液は、まず心臓から送り出された血液が大動脈に入り、次々と小動脈(細かい動脈管)に分岐して毛細血管まで流れ込んでいきます。そこから小静脈に入り、大静脈を通って心臓へ還ってきます。これが一般的な血液循環です。しかし血液の循環にはグローミューと呼ばれるバイパスがあると言われています。人体を建物にたとえるならばグローミューは非常口に相当するもので、緊急時の血液循環を調節していると考えられています。たとえば温かい場所から寒い場所へ移動すると皮膚表面の毛細血管が急激に収縮し、血液の行き場がなくなってしまいます。そのため最悪の場合、毛細血管が破れて出血を起こします。これが手足であればダメージは大きくありませんが、脳内で起これば脳出血、心臓で起これば心筋梗塞になってしまいます。これが寒い季節にトイレなどで脳卒中を起こす方が多い理由とされています。また暑い時期にプールにいきなり飛び込んで心臓麻痺を起こしてしまうケースや、冷え症や霜やけなどにもグローミューが関係しているとされています。

冷え症・霜やけの予防

グローミューの活性化には、手足を冷水と温水に交互に浸し、繰り返すと効果があると言われています。手足を冷やすことで毛細血管が収縮してもグローミューが開き、逆に温めると毛細血管が拡張してグローミューは閉じることになります。この運動を繰り返すことで血液循環の調節が円滑になるとされており、冷え症・霜やけの予防を期待できます。

グローミューとは

グローミューは動脈と静脈の境界部にある毛細血管の手前で小動脈から小静脈へ直接抜ける近道(毛細血管を通らないバイパス)だと考えられています。たとえば温かい場所から急に寒い場所に移動した際、皮膚表面にある毛細血管は体温を奪われないように急激に収縮します。寒いときに顔面が蒼白するのはこのためです。そして皮膚表面の毛細血管が収縮し、血液が流れにくくなっているのに血液が良好に循環するのは、グローミューが機能しているからだと言われています。

人体は天気の影響を受けている
季節ごとの身体の変化
気温と血液循環
予期せぬ身体の冷え
低気圧が身体に及ぼす影響

東洋医学の世界では生野菜や果物の多くは身体を冷やす傾向が強い食品とされています。もちろんアイスクリームや冷やした飲み物なども身体を内側から冷やすため注意が必要です。内臓(特に消化器)の冷えはあらゆる症状の引き金となり、風邪や冷え性だけでなく最悪の場合、腎臓不全やぜんそくなどの原因となる場合もあります。

医師から伺ったフィリピン人女性の例

患者…日本に来て数年目になる若いフィリピン人女性

症状…左胸の痛み

内科検診…胸部レントゲン、心電図に異常なし

触診…へそから下がとても冷たい状態(「日本へ来てからも果物をたくさん食べている」)

便通…日本へ来てから下痢気味

処方…下腹部の冷えや下痢に効く漢方薬(3日分)

再診…痛みが半減(その後漢方薬を7日分処方することで完治)

※原因として日本とフィリピンの風土の違いが考えられます。日本は熱帯ではなく湿度の高い風土であるため、フィリピン(熱帯雨林気候)と同じ食生活をしているとお腹を冷やし過ぎることになり、当然身体の不調が現れてきます。

野生動物は獲物を捕らえるために筋肉トレーニングなどはしていません。「おいしいものが食べたい」「どこかへ遊びに行きたい」なども考えていません。ただ純粋に、生き残るために生活しています。最小限の力でいつでも動けるよう、満腹を避け、身体の柔軟性を維持しています。むやみに貪ることで自然界のバランスを崩さぬよう、あらゆる生物が共存していくためのサイクルを保っているとも言えます。

しかし人間の食生活は養殖や家畜の育成などにより、自然界とはかけ離れた独自のルールを持っています。もちろん必ずしも食物連鎖のサイクルに沿わなければならないわけではありませんが、自然から学べるものはたくさんあります。

野生動物の理にかなった生活

人の唾液にはアミラーゼ(デンプン消化酵素)が含まれていますが、肉食動物の唾液にはアミラーゼがありません。そのため野生の肉食動物は生肉を食べる際、臓物に含まれる消化酵素を取り入れるために臓物から食べ始めます。自身の体内酵素は温存しておき、代謝と怪我の治癒に使うため病気になりにくいのです。もし病気になったりケガをしたりすると野生動物は何も食べず、巣で静かに回復を図ります。治癒するための最善の方法を本能的に知っているのです。また動物に人間と同じ過熱したものを食べさせると1週間で唾液からアミラーゼが分泌されるようになると言われており、結果的に寿命を縮めるとされています。自らの酵素を消化に費やすようになるため、生活習慣病などにもかかりやすくなるのです。ペットなどがわかりやすい例になります。

また人の赤ちゃんの唾液にもアミラーゼはほとんど存在せず、母乳からアミラーゼを摂取し、徐々に機能を育てていきます。成人並みの量になるのは5~10歳頃とされています。

旬の意味

自然界の動物は常に季節ごと(旬)の食材を食べています。確かに旬には作物などの味が良くなるという側面もありますが、健康面でも重要な意味があります。

たとえば春の食材にはアクのあるものが多く、そのアクを摂取することで冬の間に溜め込まれた体内の老廃物を排出する効果があります。散歩中の犬などが春先に草を食べるのも本能的に体調を整えるためだと言われています。

食物連鎖

食物連鎖という自然界のシステムには、生物の糞尿や死骸にいたるまですべてを代謝・循環させる機能があります。食物連鎖は土中のバクテリアなどから始まります。その土に根を張る植物は光合成によって栄養素を作り出し、植物は小動物によって食べられ、小動物はより大きい動物によって捕食され、その動物たちの糞や死骸をバクテリアが食べて植物の栄養になっていきます。この物質循環と呼ばれるサイクルによって、自然界のバランスは保たれています。そして循環ではなく消費のシステムを構築し、独自の(自然からかけ離れた)サイクルのなかにいるのが人(ヒト)です。

月と人体の呼応

地球の約70%は海であり、人体の約70%は血液です。ちなみに海水と血液の塩分濃度はほぼ同じとされています。

潮の干満は月の引力によって起こりますが、じつは月の引力は人体にも影響を与えると考えられています。昔から満月の日は「出産が多い」「大きな手術は出血が多いとされ避けられていた」などの実例もあります。

また女性の生理は昔から「月経」「月のもの」と呼ばれているように月との関係が深いと考えられ、月の満ち欠けの周期は生理のサイクルと同じ28日間と言われています。人体は自然のリズムに呼応しているのです。

 

さらに世界中の海が1分間に波打つ回数は18回と決まっており、この18という数字に呼吸(呼と吸)の2回を乗算していくと面白い数字が浮かび上がってきます。

18                  →1分間の呼吸(肺)

18×2=36         →体温

36×2=72         →1分間の脈拍(心臓)

72×2=144       →最大血圧

144×2=288      →胎児が羊水に包まれている日数

月の引力が生み出す波のリズム(自然界のサイクル)が、人体の機能とリンクしている興味深い話です。

自然から学ぶ
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